パンドラの箱はあいたのか?

☆世論は外国人材ウェルカム?

  マスコミ各社の世論調査は毎週のようにどこかの結果が発表されていますが、最近は政府の外国人材受け入れ拡大に関する設問が必ず入っていて、注目の対象となっているところです。私の印象では思ったより賛成が多いようで、半数を超える結果もあるようです。排外主義的な傾向は全体の数としては大きくなく、特に若い人たちの抵抗感は相対的に低いようです。

  このことをどうとらまえるか?日本も移民受け入れを可とする包摂社会に向かうのか?そういう積極的な意味での意識がどこまであるのかは正直わかりません。むしろ、人手不足感を肌身で感じるもとで、これからの時代、このままでは乗り切れない、そんな思いが強いのかもしれません。それに、この話が出だした当初から、政府発の膨大な情報が各メディアから連日のように発せられたことも大きく影響しているのでしょう。なんとなく既成事実化しているのです。

 

不都合な真実は知らないままが幸せか?

  私たちは日々の暮らしのなかで、ニュースやワイドショー等で様々な深刻な問題に接しながらも、実は心のどこかで、それが他人事として推移していることで気持ちの平穏を保っているように思われます。テロや戦争の悲劇も私たち日本人にとってはあまりにも普段の光景と異なる事象であって、他人事にとらえられがちです。

  気を付けなければならないのは、そういう心の持ち方は、国外の問題に対してだけではないということです。私たち日本人は、同じ日本のなかで酷い問題がおきていても、それらを知らないまま、あるいは知らないような感じに自らを置いて気持ちの平穏を保つ、そんな処世術を知らず知らずのうちに身に着けてしまっているのではないでしょうか?

  技能実習生・失踪者の問題もそういう問題の一つと思えてなりません。前回のブログでは国会質疑や一部報道で実態が明るみに出ている話に触れましたが、トータルでみればメディアの情報は政府発のものが量的にもまだまだ優勢であって、年間ベースで一万人もの外国籍の方々が失踪しているという「不都合な真実」の実感を、どれだけの国民が持ち得ているでしょうか?

 

パンドラの箱をしっかりとあけておかないとダメ

  この問題における第一人者である弁護士、指宿昭一さんは、ずいぶん前から被害者の人権救済に取り組んでいます。講演でじかにお話を聞き感銘を受けたこの方が、実は私の学生時代の先輩(飲み仲間)の教え子であるということがわかり、私にとってそのご奮闘ぶりはより身近なものとなっています。

  今回の国会での法案は技能実習と異なる外国人材導入の枠組みを創設し付加するというものですが、足元の、文字通り犯罪的な、不都合な真実を置き去りにしたままで強引な既成事実化が進むことは、将来に極めて大きな禍根を残すことは必定です。

  与党のなかでも随分と異論はあったようですが結局事前審査は通ってしまっています。頼みにすべきは野党ですが、一強政治の前で壁が厚いことも厳然たる事実です。

  パンドラの箱はあいたのでしょうか?私たちは、そしてメディアはどこまでこの不都合な真実に向き合っていけるのでしょうか?

  振り返れば、働き方改革関連法案の審議においては、裁量労働制拡大に関わるデータの不備という思わぬ事態が、既成事実化に向かっていた展開を大きく変えることとなりました。

  何がおきるかわかりません。パンドラの箱をしっかりとあけることが大事です。(了)

―7089人と4279人―

○○はそれを我慢できない

  労働組合の取り組みは、世の中に実際の思いが伝わる機会が思ったより少ない…、常日頃の私の実感です。

  従来型のメディア(新聞・テレビ等)は、必ずしもこちらが思うようにその実像を伝えてはくれません。(それはそんなものでしょう)その一方で、ソーシャルネットメディアの様々な利点を、能動的に活かすこともままならないのが足もとの実情です。

  結果として、日頃の労働運動の持っている切実かつ素朴な思いや、役職員の連日の地道な取り組みなど、かなりの部分が埋もれたままになってしまっています。政治権力のメディアに対する巧みな対応・活用にくらべて、わが方はかなり遅れをとっている・・・私自身、もどかしさを日々つのらせているのが実情です。

  神津はそれを我慢できない。自分自身がもっと努力をしていかないと。素朴な手探りからであってもかまわない、座したままでは何も前に進まないと。ということで、ささやかながらこのような形でのブログをスタートさせたいと思った次第です。

 

遠慮は罪だ

  労働組合にとってコミュニケーションは命です。

  組織のなかで役割を担っている人がその務めとして、しっかりと情報を伝えているか。そしてそもそも、それらの情報の発信元が、本気になって相手にその情報の伝達をお願いしているか?

  ついつい、相手は忙しいし、聞く気もないだろうし…などと考えてしまう。しかしそのような遠慮は禁物です。それは相手に対する優しさでも何でもない。ことと次第によっては、結果として相手に対して罪をつくっているとすらいえると思います。

  今何が起きているのか、何が大事なことなのか、それを発信できているのか、自問自答を重ねつつ、「おやっ?」と思うこと、「エッ!」と感じることから語り始めていきたい。不定期ですが、その時々の話題など織り交ぜながら発信をしていきたいと思います。

 

7089人と4279人

 この数字は何か?先日の国会審議のなかで明らかになった技能実習生・失踪者の数です。昨年一年間での失踪者数が7089人、今年の前半6月までで4279人ということです。ここ数年増え続けているのです。

 この問題、皆さんはどう思いますか?私自身の不明を恥じるとともに告白するならば、そんなに多くの外国籍の方々が失踪しているとは思いませんでした。テレビ・新聞は国会質疑を中心に報道していましたが、さらに継続して掘り下げてほしいと思います。心配なことは私たち日本人、この数字を「そんなもんかな」などとやり過ごしてしまいかねないということです。

 報道もちょっと鈍いんじゃないかと思って検索してみると、8月5日の日経新聞にルポ記事とともにちゃんと7089人の実数が取り上げられていることがわかりました。福島県郡山にある駆け込み寺的施設に逃げ込んだベトナム人女性の体験は、一日14~15時間で年間休日たった7日という過酷な労働を強いられていたというものでした。

 今年の前半6カ月で4279人ということは、一日当たり24人弱。毎日のように日本のあちこちで、生き延びていくための失踪劇が繰り広げられているのです。日本人として恥ずべき話だと思います。

 国会での議論が始まった外国人材受け入れ拡大。そもそもが問題だらけの内容ですが、こういう実態に鑑みるならば、大事なことを置き去りにして、将来に重大な禍根を残すものと言わざるを得ません。(了)