その影響力で何を目指したいのか?

噴飯ものの朝日の報道

 こういうことに時間を取られること自体にまた怒りがふつふつと湧いてくるのですが、触れないわけにいきません。21日(金)のデジタルから流されている朝日新聞の報道です。「連合、参院選は支援政党を明示せず…」との見出しのもとに、「政策協定も結ばない基本方針をまとめ加盟組合に伝えた」とする内容です。「連合幹部」のコメントも使いながら、もっともらしい書きぶりで構成していますが、噴飯ものの誤報と言わざるを得ません。組織における方針策定の動向やプロセスを全く理解していない単なる稚拙さの所産か、特定の意図をもってわざと書いたかのいずれかしか考えられません。

 連合の考え方全般や記者会見の内容は、ホームページにすべて詳しく掲載されており常にオープンですから、いかに今回の報道内容がそこからかけ離れたものなのか、是非多くの皆さんにみていただきたいと思います。どこの誰にいつどういう話を聞いたのか知りませんが、これがもし意図的報道でないとすれば、取材力の劣化は目を覆うばかりと言わざるを得ません。

 

その影響力で何を目指したいのか?

 私がここまで強く言うのは、このような紙爆弾の影響はバカにならないからです。今回、他社の報道は比較的まともでこのような噴飯ものの内容は朝日だけなのですが、これまでの通例からしてこの内容を「間違っていた」とは絶対に言わないでしょう。事実があとから変わったのだと言い張るでしょう。部数は減少の一途であり世代が若いほど新聞情報から遠ざかる一方の状況とはいえ、投票率の高い世代における影響力は依然として大きいものがあります。既にして今回の報道を鵜呑みにした反応は各所に出ており、両面の立場から私のところにもきついリアクションが届いています。

 その影響力でいったい何を目指しているのでしょうか?

 もしも民主から維新への支持の流出をさらに促進したいというのであれば、今回の意図的報道は理屈が通っているように思います。(もちろん、ふざけるな、という気持とともに)そのくらい今回の報道は後をひく可能性があると思います。とにかく訂正はしないでしょうから。したがって朝日新聞購読層の脳裏には深く長くこの記事の印象が刻まれますから。

 

政策議論のキモは究明できないのか

 これまでにも申し述べていますが、私はこの種の、政局本位で政治の側にしか視座のない論調に辟易しています。今回の記事の余波でさらにこの種の議論が横行するかもしれませんが、そのこと自体が極めて問題です。政策論議をスルーさせることによって、ただでさえ困難な状況にあるわが国の持続可能性をさらに低減させているのですから。

 本来目を向けてもらいたい政策論議に関わることとして、ここでは一つだけ言及しておきたいと思います。前回のブログで指摘していた総理の施政方針演説のなかの一節が、なぜか、すり替わっているのです。

 先行報道では「北欧などの先進事例に学び、公的職業訓練のあり方をゼロベースで見直す」となっていたくだりです。確定原稿を読み上げた総理の口から出た言葉は、「北欧などの先進事例に学び」ではなく「海外の先進事例からも学び」という内容でした。数日のなかで改変があったということでしょう。誰のどういう意図が働いたのかはわかりません。しかし生活保障とパッケージになっている雇用保障の、北欧の先進事例を嫌ったことだけは想像がつきます。こんな感じでは新自由主義的思考からの脱却は期待薄かもしれません。

 メディアには、政策議論のキモをこそ究明してもらいたいと思います。

(了)