― 新聞で得られるものは何なんだろう? ―

 

台風19号について

 台風19号が日本列島に深い傷跡を残していきました。命を落とされた方々のご冥福を祈るとともに、被災された方々にお見舞いを申し上げます。連合としても、構成組織・地方連合会とともにできること、やるべきことを連携・実施すべく、対策本部を設置しました。被害状況の集約とともに、カンパの実施、ボランティア等の被災地ニーズへの対応を図っています。また、被災企業における労働基準法・労働契約法の遵守に向けて問合せ窓口を設置し、Q&Aをホームページに掲載しました。

 そして、連合とはいわば兄弟の関係にある労金やこくみん共済coop(全労済)も支え合い・助け合いの取り組みを展開しています。こくみん共済coopは、ここ最近の災害多発傾向の中で、またもやの緊急動員、被災状況の調査から共済金の支払いまで、まさに獅子奮迅の毎日です。

 一方で、報道の一部には治水事業の限界を強調し、転居を含めた自己防災中心への発想の転換を主張するものも見受けられます。しかし、そもそも、治山治水は古今東西を問わず政治の要諦のはずです。政府には、今回生じた一連の問題を、しっかりと検証してもらいたいと思います。財政赤字を背景とした治山治水や行政要員の削減・不安定化、あるいは自己責任論を背景とするような主義主張が、国土の災害耐性を劣化させ、人々の不安を増大させるようなことはあってはならないと思います。

  

☆見出しはやっぱり・・・

 台風関連やラグビー人気のかげに隠れた感はありましたが、10月10~11日に行われた連合の定期大会も報道で取り上げられました。予想されたことではありましたが、全国紙の見出しは、連合の状況をマイナスイメージで取り上げるものが多かったようです。「連合30年 かすむ存在」(朝日)、「連合、野党分裂で迷走」(産経)、「連合30年 非正規対応おくれ地盤沈下若者そっぽ」(毎日)、「苦難の三期目 野党分裂 存在感下がる」(読売)。毎日の報道は中身をみると、組織人員の回復(2007年665万人→現在701万人)等、プラスの側面にも触れてはいるものの、見出しは横並びのマイナスモードです。

 私は昨年あたりまでは、大学で寄付講座の講義をするときに意識して「新聞は読んだ方がいいよ」などと言いつつ、学生の新聞購読者がどれだけいるものか確認してきたものですが、最近は二つの意味でインセンティブをなくしています。一つには、二十歳前後の新聞購読者がほとんどいない事実はもう変わりようもないこと、そしてもう一つは、なんでこんな一面的な報道をされる対象である私が一生懸命、新聞の「良さ」を説明しなければならないのか、という率直な気持ちです。

 まっとうな批判は歓迎しますが、直接の取材もなしに周辺情報だけを拾い上げて自らのストーリーにハメるやり方はつらいものがあります。今や、私自身が一般紙を広げて目を通す際の意識は、「また変な見出しやおかしな解釈はないか?」という「チェック」を主眼にしたものとなっているのであって、何か新しい事実を知ろうという動機はほとんどありません。既にネットの世界で最新の情報はあふれていますし、最近始めたツイッターでは全国紙・一般紙が扱わないような貴重な情報も日々飛び込んできます。

 ただし、若い人の新聞離れの一方で、この種のけばけばしい見出しはときにヤフーなどにひっかかります。(それを狙った見出しかもしれません)そして、高齢層に対する新聞の影響力はまだ根強いものがありますから、政治に対する関心が相対的に高く、投票率の高い数百万人の読者の方々には、連合はダメだという風評がその都度まき散らされるわけです。

  

ツイッターで知ってもらう

 的を得た批判ももちろんありますから、それらに対しては謙虚に耳を傾けます。しかし看過できないのは、現場の地道な努力が素通りされることです。

 私はいつも定例記者会見で、様々な現場の努力を紹介してきています。最近、特徴的なものとして言えば、闘争中のベルコ労働組合(連合北海道経由情報労連に加盟)に対する連合本部の支援、そして先般の佐野サービスエリアの労働組合の連合栃木加盟、あるいはウーバーイーツの労働組合全国ユニオンが支援)の発足、ブータン人留学生の労働組合発足とJAM四国への加盟等々、都度詳しくお話ししているのですが、連合がこのようなことに関わっていることは、全国紙の皆さんの日頃描いているストーリーにははまらないのでしょう。連合の電話相談ダイヤルには年間で約15,000件もの相談が全国から舞い込みますから、実際には、苦境にある方々に手を差し伸べているケースはもっと山ほどあるのですが、世の中には全くといっていいほど知られていません。

 私は、これからツイッターでもっと図々しくアピールしていくことが必要だと思っています。先日の報道では、私のフォロワーの数の少なさにも言及していただいたようですが、そもそも「労働組合」や「連合」の存在自体が、若い方々の意識の中に希薄なことも承知をしています。その克服も含めて、努力する甲斐は大いにあると思っています。