― 世界の行方と労働組合 ―

☆真っ二つに割れたITUC世界大会

12月2日から7日まで、デンマークコペンハーゲンにおいて世界中の労働組合ナショナルセンター)が集まり、国際労働組合総連合(ITUC)の世界大会が開催されました。

例によって日本のマスコミには全く報道されませんが、公式の内容はITUC本部のサイトに載っており、それなりの情報は得ることができます。しかしそれだけでは事の本質はつかみきれないわけで、今回は非公式のものも含めて、労働組合ウオッチャーの皆さんにミニレポートを提供させていただきたいと思います。

最大の注目点は四年に一回の書記長選出、世界の労働運動をリードするトップの決定でしたが、今回は投票を伴う選挙で、下馬評通り、真っ二つに割れた闘いとなったところです。結果はシャラン・バロウ候補(現書記長)が約5480万票、スザンナ・カムッソ候補が約5020万票ということで、残念ながら我々が推したカムッソ候補は惜敗しました。(票数は会費納入人員相当、連合は約615万票)

 

 

☆ここから積み上げる4年間

結果としてバロウ書記長は彼女の三期目を継続して担うこととなったわけですが、彼女のこれまでの専横ぶりを知る事情通からは、連合として大丈夫か、きつい対応を迫られないかというご心配もいただいています。

ご心配なく。今回惜敗とはいえ、必ずしも知名度が高くなかったカムッソ候補が全体の48%もの票を得たことは、早速にして効力を発揮しています。決着がついて、翌日の執行委員会と引き続く大会の議事において、画期的な二つの内容が確認されました。

一つは、ITUCの運営に関しての改善方向が「声明」として大会で確認されたことです。これは、この間、連合が最も連携を密にしてきたドイツのナショナルセンターDGBをはじめとした有志が提出した決議案の内容が反映されたものです。そしてもう一つは人事です。核となる本部執行部人事は、書記長の意向をもとに執行委員会・大会が追認する慣わしですが、これまでのイエスマン傾斜的な構成から脱し、カムッソ陣営の意向により、直言人材も含んだ構成となりました。ダボス会議のような国際舞台では弁舌のさわやかさが光るバロウ書記長ですが、地域・加盟組織等の末端の声を重視するとか、財政の透明性を担保する等の、内部運営の改善は喫緊の課題です。新しい四年間、ここから積み上げていくための構えだけはなんとか確保した、そんな思いのなか、大会は閉幕しました。

 

 

☆ITUCの役割と責任

非公式な動きとしても、今回、大変重要な流れが形づくられました。投票行為が必至、しかもほとんど世界を二分する、という感じになり始めた昨年の年央から、イギリス(TUC)、アメリカ(AFL-CIO)、ドイツ(DGB)、ロシア(FNPR)、そして日本の連合を加えた主要ナショナルセンターのトップ5人で、分断を回避するための会話を重ねてきたのです。

当初はなんとか投票を回避できないか、という模索もありましたが、最終的には、たとえ投票態度は割れたとしても、事後、結束のための力合わせは必ず継続していこうという申し合わせを確認してきました。そして、新書記長の運営改善に対するチェック&フォローも随時共同でしていくことになったところです。

私自身、この一連の動きに深く入り込んできました。

途上国の働く仲間が貧困から脱却していくためには、まともな労使関係をいかに根づかせられるかが鍵です。「労使関係」には、付加価値を生み出し、公正な配分を行い、生活原資を確保するという極めて重要な機能が備わっています。テロや戦争も「衣食足りて礼節を知る」がなければ、いつまでたっても無くなりません。ITUCはその運動基盤であり、大きな役割と責任があります。しっかりとした運営は不可欠です。